田んぼのあるのどかな風景を横目に、
古から変わらずそこに在る鎮守の森を抜けてようやくたどり着いたところ。
悠然と構える黒い家屋に足を踏み込んでみると、窓から光が注がれる部屋が目に留まる。
自然の光に照らし出された、たおやかな空気感に安堵する。
奥の暗がりへと進めば、一変して静謐な世界に包まれる。
結界を越えて聖域に踏み込んでしまったか…?と、畏れを抱く。
一度外に出てもうひとつの扉を開ければ、木蓮の木がそびえる庭に面した空間があらわれる。
内観を促すような、静寂のひととき。
まるで季節がうつろぐように、空間ごとに表情を変えてゆく。
全く異なる個性をもつものたちが、ひとつ屋根のしたで互いを認め合うようにして同居している。
着るひとと呼吸をあわせるようにして肌に馴染み、心地よく身にまとえる洋服。
つくり手が使うひとのことを考えて手をかけ魂を込めてかたちづくった、うつわや道具。
店主の視点を通して選び抜かれたものたちはジャンルの垣根を超え、
時の流れや価値観の変化にも翻弄されず、美しさや存在感を携えている。
そのものがもつ本質を引き出してくれるような場所。ここならではの時の流れに身を任せてみると、
慌ただしい日常にかまけて見過ごしていた大切なことを気付かされるかもしれない。